理事長挨拶
Greeting

理事長就任のご挨拶

 

2020年1月

日本神経免疫学会 理事長  藤原一男

福島県立医科大学多発性硬化症治療学講座 教授
一般財団法人 脳神経疾患研究所
多発性硬化症・視神経脊髄炎センター センター長

 

 この度、楠 進前理事長の後を継いで日本神経免疫学会の理事長に就任いたしました。本学会のますますの発展に尽力したいと考えております。何卒よろしくお願いいたします。
 私自身は、これまで30数年間にわたり脳神経内科医として主に多発性硬化症や視神経脊髄炎等の診療や研究、教育に従事してきました。しかし神経免疫学のすそ野は広がっており、また臨床的な検討と共に分子細胞レベルの研究や疾患モデルの解析も大変盛んです。本学会が、神経免疫学の様々な分野で重要な知見を我が国から世界に発信し、また免疫性神経疾患の患者さんの診断や治療、予後を改善することに十分に貢献できるように、その役割をさらに充実させていきたいと考えております。
 我が国の神経免疫学の歴史を振り返ってみますと、特に免疫性神経疾患における我が国の取り組みは、1970年台半ばの重症筋無力症、多発性硬化症の厚生省の班会議を起源としています。その後これらの班は厚生省特定疾患・免疫性神経疾患調査研究班として統合されました。この研究班では、両疾患のほかにもHTLV-I関連脊髄症、免疫介在性末梢神経疾患、炎症性筋疾患、自己免疫性脳炎など様々な疾患が取り上げられてきました。しかし「学際的で自由な研究発表と討議のための適切な場を創造する」ために研究班員の先生方が発起人となり、1988年に日本神経免疫研究会が設立されました。その後第9回から日本神経免疫学会に名称を変え今日に至っております。
 これまで本学会では、上記の中枢、末梢、自律神経、筋などの神経関連組織に関わる免疫学と免疫介在性あるいは炎症性の多様な疾患に関する新知見が蓄積され、学術及び医療の面から活発な議論が行われ、将来のこの分野を担う人材育成の場にもなってきました。本学会員の研究は、国際的に注目されるアカデミックで質の高いものが数多く生まれています。2015年に難病新法が施行され指定難病は一気にその数が増加しました。昨今、多くの疾患で診療ガイドラインが作成され、免疫性神経疾患でも日常診療に必要な情報がまとめて提供されています。本学会はこれらの作成や改訂にも大きな貢献をしてきました。
 一方、取り組むべき課題もいろいろあります。現在、約600名の会員数ですが、若い臨床医や研究者に神経免疫学の魅力を伝えてリクルートしていくことは急務です。本学会は、英文誌であるClinical and Experimental Neuroimmunology (CENI)を2010年から刊行してまいりました。CENIを多彩な内容で原著論文や総説を含めて掲載する論文数を増やし真の国際誌に育てていくことも我々の重要な任務です。基礎及び臨床研究と共に新薬の国際治験の日本人のデータなどもCENIに掲載していきたいと考えています。現在、認定医制度の導入が検討されており、それに伴い学会の法人化も必要になることが予想されます。
 近年、神経変性疾患や精神疾患などにも免疫学的な解析が行われており、これらの領域の研究者とも連携していき、さらに人工知能(AI)など新たなテクノロジーを取り入れていくこと等も必須だと思います。
 これからの日本の神経免疫学の更なる発展に向けて、本学会にご意見があればなんなりとお聞かせください。