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慢性炎症性脱髄性多発神経炎
(CIDP:Chronic Inflammatory Demyelinating Polyneuropathy)

免疫系の異常により、自分の細胞を間違って攻撃してしまう自己免疫疾患のひとつです。
末梢神経系で炎症が起き、運動や感覚に障害が生じる病気です。発症に関わる自己抗体は発見されていません。


疫学(日本)1)

  • 患者数 約4,180人
  • 有病率 3.3人/10万人
  • 発症年齢(中央値) 52歳(ただし、年齢層は幅広い)
  • 男女比 1.5:1

原因(病態)2)

免疫系の異常により、末梢神経系のニューロン(神経細胞)の軸索を覆うミエリン髄鞘 ずいしょうが攻撃を受けて脱落(=脱髄 だつずい)し、神経活動における情報が、筋肉にスムーズに伝わらなくなる病気です(図1)。
CIDP特有の自己抗体は見つかっていません。

図1:CIDPの原因(イメージ図)

末梢神経系:中枢神経系(脳・脊髄)以外の神経系で、脳や脊髄から伸び出る神経のこと(脳神経、脊髄神経とも呼ばれます)。中枢神経系から発信された指令を体の各部に伝える働きを担っています。
軸索:神経の情報を伝える電線のようなものです。
ミエリン:軸索を守る“電線のカバー”のようなものです。ミエリンが脱落すると、軸索がむき出しになり、情報がうまく伝わらなくなります。

症状3)

末梢神経系において、ミエリンが脱落した部位や程度によって、あらわれる症状はさまざまであり、症状のタイプや程度も一人ひとり異なります(図2)。

図2:CIDPの症状の特徴

なかには、筋肉に栄養が届かなくなって、筋肉がやせてしまう患者さんもいます。
見た目ではわからない症状も多く、人から理解してもらえないことが多いため、孤独を感じる患者さんも少なくありません。

経過2)

CIDPの経過や臨床症状は、発症年齢で異なります。
若年発症の患者さんの多くは、病初期に徐々に進行し、その後は症状が出現する時期(再発期)と症状がおさまる時期(寛解期)が繰り返しあらわれます。また、運動神経が障害される人が多い傾向があります。
一方、高齢発症の患者さんでは、ゆっくりと進行する人が多く、運動と感覚神経が障害される人が多い傾向があります。

【出典】
1)Aotsuka Y, et al. Neurology. 2024; 102 (6): e209130.
2)慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー、多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン2013. p. 8, 11-14.
3)難病情報センターホームページ(2024年4月現在)