症状が安定しているときの治療(寛解期)
グルココルチコイド(GC)(ステロイドともいう)剤
腎臓の上にある副腎の皮質から分泌される「副腎皮質ホルモン」を人工的に合成して作った薬で、免疫や炎症を抑える働きがあります。
GC(ステロイド)剤の副作用
正常な感染症に対する免疫力を抑えてしまうことなど、さまざまな副作用があらわれます(図1)。
使用期間が長くなるほど、総使用量が多くなるほど、副作用の種類やあらわれる回数は増え、その重症化リスクもあがります(図2)。
ただし、長期に使用している人が、副作用を恐れて、自己判断で急に使用を中止すると危険です(参照:副腎抑制とは?)。
副作用があらわれたときや、薬を減らしたいときは、医師・薬剤師に必ず相談してください。
図1:GC(ステロイド)剤の副作用
図2:あらわれる時期
参考:鈴木翔太郎. 人工呼吸. 2022; 39: 145-152.
副腎抑制とは?
体内では、血圧や血糖、水分などを一定に保つために副腎から「副腎皮質ホルモン」が分泌されています。その分泌量は、プレドニゾロンに換算すると1日3~5 mgで、朝覚醒後の30分~1時間が最大で、夜就寝後2~3時間が一番低くなり、一定量が保たれています1)。
一方で、GC(ステロイド)剤を2~3週間以上使用すると、体は「体内での副腎皮質ホルモンが多すぎる」と誤解をして、副腎の働きが低下し、本来分泌されるべき「副腎皮質ホルモン」が分泌されなくなります(副腎抑制)。
そのときに、急にGC(ステロイド)剤の使用を中止すると、副腎の働きはすぐには回復できないため、「副腎皮質ホルモン」が不足してしまい、疲労や脱力、低血圧によるめまいなどが生じてしまいます。ときにショック状態に陥ることもあり、大変危険です。
薬を減らしたい、中止したいときは、医師・薬剤師に必ず相談してください。
免疫抑制薬
体内に過剰な免疫反応や炎症がおこったときに、これを抑える薬です。
GC(ステロイド)剤と併用されたり、副作用によりGC(ステロイド)剤を減らすときに使用されたりします。
主な免疫抑制薬
アザチオプリン、シクロホスファミド、ミトキサントロン、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムス、シクロスポリン など
免疫抑制薬の副作用
正常な免疫を抑えてしまうことがあります。
長期にわたる使用で、がんになるリスクが上がることがわかっています。
図3:免疫抑制薬の副作用
抗体製剤(生物学的製剤、分子標的薬ともいう)
病気の目印がある細胞(ターゲット細胞)にくっつき、これを破壊したり、働きを弱めたりする薬です。
ピンポイントで攻撃を行うため、正常な細胞はダメージを受けにくくなります(図4)。
治療の効果が高く、副作用が比較的少ない治療法とされています。
これまでの薬とは異なり、最新のバイオテクノロジーによって作られたタンパク質でできた薬です。
図4:抗体製剤の一般的な働き
抗体製剤の副作用
目印がターゲット細胞以外の細胞にあらわれていると、目的外の作用が生じることもあります。抗体製剤を使用するときは、医師・薬剤師から、各薬剤の副作用について、詳しい説明があります。
図5:抗体製剤の副作用
注)各抗体製剤の詳しい副作用については、「病気について」の各病気の治療の部分を参照してください。
【出典】
1)林瑶子 他. 岡山医学会雑誌. 2014; 126: 59-63.
【参考資料】
多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023. p. 43-47, 82-85, 86-98.
重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン2022. p. 63-68, 77-83, 86-88.
慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー、多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン2013. p. 69-70, 73-74, 104-106, 116-123.