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視神経脊髄炎スペクトラム障害
(NMOSD:Neuromyelitis Optica Spectrum Disorders)

免疫系の異常により、自分の細胞を間違って攻撃してしまう自己免疫疾患のひとつです。
主に視神経や脊髄、脳などに炎症が起きてしまう病気で、発症に関わるアクアポリン4(AQP4)抗体という自己抗体が発見されています。

疫学(日本)

  • 患者数 約6,500人1)
  • 有病率 5.4人/10万人2)
  • 発症年齢 30代後半~50代に多い2)
  • 男女比 1:92)

原因(病態)

中枢神経系のニューロン(神経細胞)を支えているアストロサイト上のタンパク質AQP4が、AQP4抗体によって攻撃されて炎症が生じます(図1)。この炎症はニューロンに達して、時にミエリン髄鞘 ずいしょうの脱落(=脱髄だつずい)が生じることもあります。
NMOSDの患者さんの約80%がAQP4抗体陽性ですが、この抗体が陰性の患者さんもいます2)

図1:NMOSDの原因(イメージ図)

中枢神経系:脳、脊髄からなり、全身の神経ネットワークの司令塔としての働きを担っています。
アストロサイト:神経細胞に栄養を運んだり、神経伝達物質の除去をしたりして、神経細胞の生存と働きを助ける細胞です。脳を有害物質から守る血液脳関門も作っています。
AQP4:アストロサイトの足突起にたくさん存在するタンパク質で、水分子の出入りを調節しています。AQP4抗体は、このタンパク質をターゲットとして攻撃します。

症状

炎症を起こす部位は人によってさまざまであり、症状のタイプも程度も一人ひとり異なります(図2)。

図2:NMOSDの症状の特徴2)

なかには、シェーグレン症候群や慢性甲状腺炎(橋本病)、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症など、他の自己免疫疾患を抱えている患者さんもいます2)
見た目ではわからない症状も多く、人から理解してもらえないことが多いため、孤独を感じる患者さんも少なくありません。

経過

NMOSDは、数時間から数日間で急激に進行し、最初の発作で重い症状があらわれます(急性期)。
患者さんのなかには、歩行障害や失明に至ってしまう患者さんもいます。

症状が安定しているとき(寛解期)に予防治療をしていないと、1~1.5回/年の頻度で再発し、再発のたびに障害が蓄積していきます(図33)
NMOSDの再発は、視力障害や脊髄障害などの症状が重くなることが多いため、再発予防が重要です。

図3:NMOSDの自然経過(イメージ図)

【出典】
1)難病情報センターホームページ(2024年4月現在)
2)多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023. p. 7-10.
3)神経内科Clinical Question & Pearls 中枢脱髄性疾患. 中外医学社, 2018. p. 325.